下院法案HB125可決

2013年3月にジョージア州議会では、下院法案HB125が可決しました。この法案の擁護派は、運転免許や政府が給付する公的サービスや各種資格証明の申請を容易にしようという目的であるという見解をのべています。つまり、各種資格証書の延長申請手続きの大幅な遅れを緩和するために、初回申請時に米国市民や永住権保持者である証拠を提示したものは、延長時には再度その書類を提示しなくともよいとしています。公共サービスの対象となるものとして、政府補助金、家産免除、公共住宅・政府援助住宅、退職給付金、運転免許証、税金控除などがあげられています。

しかしながら、この法案は、外国政府発行のパスポートは、滞在資格を示すI-94カードと一緒でなければ有効な身分証明書として認めないとしています。一般に、就労ビザや就学ビザで米国に滞在している人は、入国時にI-94カードを記入し、パスポートにホッチキスで添付されています。しかしながら、ビザ免除プログラム(ESTA)をつかって、観光や出張ベースで渡米する人は、事前にオンラインで個人情報を入力しているため、入国時にI―94カードの記入が不要になりました。したがって、ビザ免除プログラムで入国した人は、I-94カードがないため、パスポートが有効な身分証明書としてみとめられなくなります。さらに、連邦移民局は昨年度すでに近い将来I-94カードの発行を撤廃する旨を発表しているため、現在のビザ保持者でさえ、連邦政府がI-94カードを廃止したら、パスポートが有効な身分証明書として認められなくなります。

実際にESTAをつかって観光や出張目的で渡米する人が、これら公共のサービスを申請することはあまり考えられませんが、例えば、新規投資家が就労ビザ取得前にESTAをつかって現地視察に来る場合、就労ビザを申請して必要な書類(旅券とI-94)を取得するまでは、政府系ビルへのたち入り、水道など契約、子供の現地校への入学手続きなどを行うことができなくなる可能性があります。また、フルトン・カウンティーをはじめ、この法律が可決したら、結婚証明書発行にパスポートが有効なIDとして認めなくなる可能性もあります。では、なぜこのような法案が可決したのでしょう?

2012年6月にアリゾナ州の不法移民取締法SB1070の4つのうち3つの条項に対し、米国連邦最高裁が違憲判決を下しました。このため、同類の不法移民取締法を可決したユタ州、インディアナ州、ジョージア州、アラバマ州、そしてサウス・カロライナ州では、州レベルで不法移民を取り締まることが難しくなりました。これに対し、不法移民が自ら、もしくは米国で出生した子供を通して公的便宜を享受する道を絶とうという目的で下院法案125が提案されたのではないかとの見方がでています。

しかしながら、連邦政府が廃止しようとしているI-94カードがないと旅券を有効な身分証明としてみとめないなど、このような州レベルの法案は、連邦移民法政策との矛盾をかもしだしています。また、2012年6月に米国政府は国外退去処分の対象になりうる若者に対し、一定条件を満たせば国外退去処分を一時的に延期し、その間就労許可証を与える措置を発表しましたが、これら若者もこの法案により、運転免許証を申請するために必要な書類を提示できないことになります。このため、この法案は2011年にジョージア州で可決した不法移民取締法HB87をさらに助長するものだという批判がでています。

この法案は、さらに、地方政府団体や政府事業の請負業者は組織の規模にかかわらず、すべてオンラインでソーシャル・セキュリティー番号を確認するE-Verifyシステムを導入して、社員の移民法上の滞在資格を確認することを義務つけています。

この法案は、もし上院を通過したら2013年7月1日から施行される予定ですが、地元では各種団体がこの法案を撤廃しようと呼びかけていますので、今後の動きを見守る必要があるでしょう。
                 

本ニュース記事に関する注意事項
(DISCLAIMER)

本雇用・労働・移民法ニュース記事は弁護士として法律上または専門的なアドバイスの提供を意図したものではなく、一般的情報の提供を目的とするものです。また、記載されている情報に関しては、できるだけ正確なものにする努力をしておりますが、正確さについての保証はできません。しかも、法律や政府の方針は頻繁に変更するものであるため、実際の法律問題の処理に当っては、必ず専門の弁護士もしくは専門家の意見を求めて下さい。べーカー・ドネルソン法律事務所および筆者はこの記事に含まれる情報を現実の問題に適用することによって生じる結果や損失に関して何ら責任も負うことは出来ませんのであらかじめご承知おき下さい。

執筆:大蔵昌枝弁護士, ベーカー・ドネルソン法律事務所

Posted:March 2013