2018年2月15日に移民法改正法案と訂正法案を含む4つの移民改正法案が、可決に必要な60票を獲得できずに、ずべて上院で否決されました。

 

まずは、トランプ政権の意向を反映した共和党上院議員7名から提案された法案Secure and Succeed Act of 2018には、特定条件を満たすDreamerと呼ばれる合法滞在資格をもたない若者に市民権申請の権利を与える代わりに、アメリカ・メキシコ間国境に壁建設費用$25ミリオン予算の確保、国境取締強化、不法移民の退去強化(癌患者の子供を持つ親、学校の先生、ドリーマー、家庭内暴力被害者を含む)、抽選永住権排除、永住権申請者数の大幅カットなどの条件を含まれていました。この法案により、芋づる式に親兄弟や成人の子供などの家族を呼び寄せることができなくなり、アジアや中南米からの移民の数が激減し、また、アメリカ経済の発展に不可欠な労働層の受け入れが減ることによりアメリカ経済へ多大な打撃があると懸念されていました。この極端な移民法取締案のために、ドリーマーのアメリカ市民権申請法案まで一緒に否決されるのを回避するために、ラウンド上院議員(共和党)とキング上院議員(無所属)を始めとする25名の両党と無所属の共同訂正法案が提案され、ドリーマーにアメリカ市民権への道を与える代わりに、トランプ政府の提唱する国境の壁建設費用$25ミリオン予算は確保すること、ただし現行の移民法システムを極端に改正するのではなく、子供の不法移民を手伝った親の永住権はスポンサーできないことを提案しました。これに対し、マケイン上院議員(共和党)とクーン上院議員(民主党)は、国境の壁建設予算は法案から削除し、Dreamerにアメリカ市民権への道を与えるのと引き換えに、アメリカ・メキシコ間の国境警備を増強するように提案しました。しかしながら、いずれの法案も可決に必要な60票を獲得することができず、ドリーマーのアメリカ市民権への道は絶たれてしまいました。

 

その他にはStop Dangerous Sanctuary Cities Actも否決されました。Sanctuary Cities とは、全米におよそ300ほどある聖域都市のことで、これら都市はもともと1980年代に地元住民の宗教的信念とエルサルバドールやグアテマラなどの中南米からの亡命者の受け入れを拒否していた州政府に対抗する措置として、地元の教会を中心に人道的な救済措置としてできたものです。これら地域は不法移民に対して比較的寛容で、不法入国者の家族が離れ離れにならないように、不法移民の取締りや情報提供に関して政府との協力を拒んでいます。例えば、警察に犯罪を通報したものが、逆に不法移民だという理由で逮捕されることがないように、地域の安全確保の意味からも当該都市の警察官は住民の滞在資格を調査する権限は与えられておらず、不法移民でも逮捕される危険を冒さずに犯罪を通報することができるように配慮してます。また、不法移民は米国市民とほぼ同様の公共サービスを受けることができ、子供が公立学校に通ったり、病院の治療を受けることができ、不法移民という理由で逮捕されたり強制送還されることはありません。結果的に、これら聖域地域には難民、亡命者、不法滞在者やその他身の安全を確保する目的の者が多く集まってきており、聖域都市の政策に反対する者は、これら都市は犯罪者の集まりを助長しており、聖域都市も連邦当局と協力して不法移民や犯罪者などの調査を行うべきだと主張しています。これに対し聖域都市の擁護派は、これら都市では犯罪率が非常に低く、亡命者や不法移民も経済に貢献しており、彼らの受け入れと犯罪の関連は見られないと主張しています。Stop Dangerous Sanctuary Cities Actは、聖域地域が不法移民の滞在資格の情報提供や政府からの不法移民拘留や釈放の要請を拒んだ場合、当該政府が経済開発補助金や地域開発補助金を受ける権利を剥奪するとしていますが、この法案も否決されました。

 

これら4法案が上院で否決されたことにより、極端な移民取締措置が取られることはなくなったものの、この法案により救済されたであろう180万人ものドリーマー(不法滞在の若者たち)の将来像が見えなくなってきました。その中でも既に暫定的就労許可証を与えられている69万人ものDACAと呼ばれる若者も、今後就労許可証を延長し続けることができるのか、先行きが危ぶまれます。

執筆:大蔵昌枝弁護士

 

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Posted on February 21st 2018