日本から米国に派遣される多国籍企業の役員・管理職は、主にLビザやEビザで赴任しますが、Eビザは延長回数に制限がないのに比べ、Lビザ管理職の滞在期間は最長7年までです。7年目以降も米国で就労するには、Eビザに変更するか、永住権を申請する方法があります。

雇用主スポンサーによる永住権の申請には5つの優先枠がありますが、多国籍企業の役員・管理職は審査時間が比較的に短い第一優先枠に該当する可能性があります。第一優先枠で永住権を申請する場合、労働局に申請する外国人労働許可申請 (Labor Certification) の過程を省くことができるため、永住権取得までの時間が大幅に短縮されます。現時点の審査時間はテキサス・サービス・センターでおよそ4ヶ月、ネブラスカ・サービス・センターでおよそ7ヶ月となっています。

米国駐在の役員・管理職の場合、海外の関連会社で渡米前の3年間のうち1年以上の海外の関連会社で上級管理職としての勤務経験があり、管理職として渡米しているのであれば、第一優先枠の多国籍企業の役員・管理職というカテゴリーで永住権の申請を行うことが可能です。しかしながら、永住権申請の多国籍企業の役員・管理職の条件は、通常のEやLビザ管理職 の条件よりさらに厳しいため、米国でEやLビザ管理職として勤務していても、必ずしも第一優先枠の多国籍企業の役員・管理職として認められるわけではありません。たとえば、会社規模が小さい、監督する部下が少ない、部下が大卒ではない、または自ら管理職とはみなされないような日々の業務をこなすなど、第一優先枠の管理職とは判断されない場合もあります。

永住権保持者のメリットとしては、州立大学では現地住民用の学費の適用、各種奨学金やローンの申請、就学中のバイト、などがあげられます。特に昨年度以来大卒用のH1B就労ビザ枠が大幅に不足しており、さらに近年の失業率の高さに伴い、各種就労ビザの審査が大変厳しくなっているため、内定をもらっても就労ビザをスポンサーしてもらえないという事態が多発しています。EやLの就労ビザだと、父親の帰任とともに、家族も米国での滞在資格がなくなってしまいますが、永住権をもっていれば、父親の転勤にかかわらず、子供が引き続き米国で学校に通えて、しかもビザにとらわれないで就職活動ができるのが、大きな利点といえるでしょう。注意点としては、子供が21歳に達した時点で、親の同伴家族として移民申請ができなくなるので、子供の年齢や大学への進学時期などを考慮し、早めに永住権申請準備の計画をたてることが良策だと思われます。

永住権取得に伴うディメリットとしては、全世界の所得が課税対象となるため日本の退職金も課税対象となる、米国に収入がなくなっても米国政府にタックスリターンを提出する義務があること、などがあげられます。また、米国を継続して1年以上離れていると永住権は失効してしまいます。また、1年の半分以上を米国外で過ごした場合も米国に永住の意思なしとみなされ、入国時にグリーンカードを没収されることもあるので注意が必要です。したがって、米国を不在中も永住権を維持したい場合は、出国前に再入国手続きを行う方法もありますが、個々の事情に関しては弁護士の意見を求めたほうがよいでしょう。

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執筆:大蔵昌枝弁護士, ベーカー・ドネルソン法律事務所
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