2018年5月10日にF学生ビザ, J交換訪問者ビザ, M職業学生ビザ保持者の不法滞在に関する方針を変更する旨を発表しました。通常、一回の入国で許可された滞在期間を180日超えて滞在すると3年間はアメリカへの入国が禁止となります。不法滞在が365日を超えると10年間アメリカへの入国禁止となります。ただ、今までは学生ビザ保持者は、裁判官から強制送還の通知が発行されない限りは不法滞在扱いにならなかったために、この3/10年入国禁止の対象とはなりませんでした。しかしながら、今回の法律改正により、F, J, M学生ビザ保持者もI-20やDS2019に書かれてある滞在期間を超えて滞在した場合は、不法滞在扱いとなり、今後は3/10年入国禁止の対象となります。

 

米国に入国するためには、ビザ免除のESTA登録を行うか、もしくは有効なビザ・スタンプを申請してから入国します。入国を許可されるとその場でオンラインの出入国管理システム(I-94)に滞在期間を記入され、パスポートの入国印の下にもI-94と同じ滞在期限が明記されます。ところが、F, J, M学生ビザ保持者の場合は、特定の滞在期限がなく、I-94とパスポートの入国印の下には“D/S”と記載されます。D/SとはDuration of Stayのことで、入学に必要なI-20やDS2019に書かれてある期間まで滞在が有効であるということです。I-20やDS2019に書かれてある期間に猶予期限(Grace Period)を足した期間を超えて滞在したり、学校に通わなくなった場合などは滞在資格の違反となりますが、I-94に滞在期限がかかれていないために、今までは滞在資格を違反しても不法滞在扱いにはなりませんでした。

 

今回の法律改正により、2018年8月9日以前に滞在資格を違反した場合は、違反日から不法滞在とみなされるようになります。また、次の条件のいずれかが当てはまる場合は、滞在違反日と次の該当項目のいずれかの早い日から不法滞在扱いとなります。(1)非移民ビザもしくは移民ビザ申請中に自分の滞在資格を違反したことが発覚し、ビザ申請が移民局に却下された日の翌日;(2)I-94が失効した日の翌日;(3)移民法裁判官もしくは入国不服審査会(BIA)により強制退去処分を命じられた日の翌日。

 

2018年8月9日以降に滞在資格を違反した場合は、次の条件の中から該当する項目で一番早い日から不法滞在扱いとなります。(1)学校の授業や許可された活動の参加を辞めた日の翌日、もしくは不法な活動に参加した日の翌日、(2)学校の授業を完了し、OPTや猶予期限が切れた日の翌日、(3)I-94が失効した日の翌日、(4)移民法裁判官もしくは入国不服審査会(BIA)により強制退去処分を命じられた日の翌日。

 

2016年時点でアメリカには145万人ものF, J, Mのビザ保持者が滞在しており、その中でもF1ビザ保持者の6.19%、J1ビザ保持者の3.8%、Mビザ保持者の11.6%が許可された期限を超えて滞在しているという移民局の統計が報告されています。このようなオーバーステイをしている人の数を削減しようという目的で、今回の法案が発表されました。F, J, M学生ビザ保持者の配偶者や同伴家族も対象となります。

 

今回の法律改正により、F, J, M学生ビザ保持者は一回の滞在が180日を超えた場合は3年間のアメリカへの入国禁止となり、過去のオーバーステイが累計で1年を超えた場合、その後に正式なビザや入国許可証なしにアメリカに入国したり、入国を試みた場合は、永久に入国できなくなりますので注意が必要です。永久入国禁止の対象になった場合、入国禁止免除(ウエイバー)の条件に該当しない限りは、将来アメリカのビザの申請、入国、永住権申請をすることはできません。例外として、18歳未満の未成年の学生は不法滞在扱いにはなりません。

 

今回の法律改正は大変厳しい内容となっており、ついうっかりとした滞在資格の違反が後から発覚した場合(例えば、OPT期間失効後1日余分に仕事をした、無休のボランティア活動が後になって就労だとみなされたなど)、過去に遡って不法滞在が始まったとみなされる可能性があります。これに対し、アメリカ移民審議会から移民局宛に意見書が提出されていますが、この法律に変更点が加えられなければ、今後本人も気が付いていないような過去の滞在資格違反のために不法滞在とみなされる例が出てくると思われます。

執筆:大蔵昌枝弁護士

 

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Posted on June 20th 2018