2015年2月16日、米国連邦地裁は昨年11月下旬に発表された大統領令による移民法改正案に対し、一時的な差止命令を下した。この大統領令は不法移民の救済措置を打ち出しており、米国に5年以上滞在し、犯罪歴のない人に対し、短期的な滞在資格を認めるものである。米国内に滞在するおよそ1100万もの不法移民のおよそ半数が対象になるとみられている。差し止めの対象となるのは、子供の時に不法入国した者(DACA)と米国市民権や永住権保持者の親(DAPA)である。2012年のDACA案では、2007年以前に16歳未満の時に米国に不法入国したものが対象であったが、今回の大統領令では対象者の範囲が拡大され、2010年までに入国した者が含まれる。

 

しかしながら、大統領令は越権であると共和党の猛反対にあい、発令の翌月には保守的な南部州を中心に26州が、オバマ大統領の発令は憲法違反だとして南部テキサス州の連邦地裁に提訴した。その結果、2月18日から開始する予定であった新DACAとDAPAの申し込みを受け付けが一時的に差し止められることになった。

 

この一時的差止命令により、不法移民の強制送還延期や就労許可証の申請開始は一旦保留となる。ただし、2012年案に基づきすでにDACAを取得したものやその延長申請は、差し止めの対象とはならない。また、今回の一時的差止命令は2014年11月に発表された強制退去処分対象者の優先順位にも影響はしない。つまり、公共・国家・国境の安全を重視し、重犯罪者の退去を優先するという趣旨である。さらに、今回の一時的差止命令は大統令の中でも新DACAとDAPAに限られていることから、H1B保持者の永住権申請の開始にともなうH4配偶者の就労許可証申請など、その他の非移民ビザや移民ビザに関する項目には影響しないとみられる。

 

今回の措置に関し、連邦地裁は国境警備体制強化を怠った連邦政府責任を指摘しており、それによってもたらされた不法移民の流入により各州政府が医療費や教育費の財政負担の増加などの被害を被っているため、各州政府は原告としての資格を有していると判断している。これをふまえて、新DACAやDAPAの合法性について分析をしているが、連邦地裁は今回の大統領令は新DACAやDAPAを実現するために必要な行政手続きを経ていないと指摘しているものの、大統領令の違憲性については触れていない。

 

今回原告側が勝訴した場合、連邦政府が上訴すると想定される。今回の文面では現状の不法移民による財政負担について言及はしているものの、これら不法移民の合法化によってもたらされる税収増や経済効果については触れていない。また、2012年度のミシシッピ州でのDACAの合法性に対する訴訟では、原告側のいう経済的打撃とは単なる推測にすぎないと、訴えが却下されている。このように法廷によってDACAに対する見解が分かれているようにみうけられるが、今後の裁判の成り行きが5万人もの人々の人生を左右することになるであろう。

 

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Posted 2/27 2015