新卒の学生に最もよく使われるH-1B短期就労ビザの申請は、今年は受付開始の4月初週でH-1B枠の6万5千を2倍ほどこえる申請があったため、申請開始からわずか5日目に受付が終了しました。H-1Bの延長申請、もしくは大学機関や政府や非営利研究施設などが雇用主である場合は、H-1B枠の対象とはなりませんので、引き続き申請は受け付けられます。ただし、現在H-1B枠免除の大学や政府関連団体で就労している人がH-1B枠免除でない一般私企業に転職を希望する場合は、H-1B枠の対象となりますので、来年の4月まで申請はできなくなります。

今年は、4月5日までに移民局に申請書類が届いた申請者は皆無作為の抽選にかけられ、当選者には受領通知書が送付され、抽選に漏れた人には申請費用とともに申請書類が返却されました。これは景気が回復してきた兆しともいえ、今後は不景気に入る以前のように、申請初日にH-1Bの枠が達成する可能性もでてきました。特に技術系の人材が圧倒的に足りないアメリカで人材確保ができない現状を打開するために、議会では現在移民法改正案を検討していますが、H-1Bの枠増強については今後の議会の動きを見守る必要があるでしょう。ここではH-1Bの抽選に漏れた人の現時点でのビザの選択肢についてご説明します。

• OPT就労許可証

学生ビザで滞在されている方で現在OPT (オプショナル・プラクティカル・トレーニング)で就労している場合は、OPTが終了したら60日間の猶予期間(グライス・ピリオド)が与えられます。この猶予期間がきれるまでに米国を出国するか、さらに大学の他のプログラムに入学をして学生の滞在資格を延長するか、もしくはその他のビザ種類に滞在資格を変更する申請を行なわなければなりません。H-1Bの審査は職種にみあった専門性の高い学問を修めているかを重要視されますので、学生ビザを延長する場合は、自分の希望する職種に関連する専門性の高い科目を履修しているか再度見直し、次回のH-1B申請時期にそなえて、より確実な教科選びをされることをお勧めします。

• B2観光ビザ

また、学生ビザは延長しないが、OPTの猶予期間がきれてもさらに数ヶ月アメリカに滞在したい場合は、B2
観光ビザに変更申請を提出することができます。ただし、観光ビザ滞在資格では、米国内で就労したり賃金を得ることはできませんのでご注意ください。

• TNビザ

カナダやメキシコ国籍保持者であれば、NAFTA条約によるTNビザを申請する選択肢があります。ただし、TNビザの場合は、NAFTAの特定職業リストにある職種への就労に限られ、また特定の学位を修了したものに限ります。現在有効なビザ滞在資格があれば、いずれも米国内での滞在資格の変更もできます。カナダ国籍保持者は米国に入国するのにビザスタンプが必要でないため、カナダにいる人は米国への入国時に国境でTN申請書類をその場で審査してもらうことができます。メキシコ国籍保持者は米国に入国するのにメキシコの米国大使館でTNのビザを申請してからの入国となります。

• LビザとEビザ

もし、米国の雇用主が、米国外に関連会社があれば、OPTの猶予期限がきれるまえに、一旦米国を出国し、米国外の関連会社に勤務し、次回のH-1B申請時期まで関連会社で勤務するという方法もあります。この間に米国に出張で入国する必要がある場合は、ビザ免除(ESTA)もしくはB1商用ビザを申請して短期間入国することはできます。ただし、入国が就労目的だと疑われたら、入国を拒否されることもありますので、事前に弁護士や専門家の意見を求めたほうがよいでしょう。

さて、米国外の関連会社(親・子会社、兄弟会社など)で1年以上勤務したら、L-1企業内転勤ビザを申請する可能性もでてきます。しかしながら、近年のLビザの審査は非常に厳しく、過去に関連する専門性の高い特殊な技術や知識をみにつけているか、もしくは管理経験などを十分にそなえているかなどを審査されます。経験年数が少なくとも、修士号や博士号を修め、職種と関連する分野で顕著な研究成績を残した人、もしくは学会や業界に多大な貢献をした人であれば、可能性はあります。

国外の関連企業で1年以上の勤務経験の無い場合は、Eビザの選択も考えられますが、EビザもL-1ビザ同様、十分な管理経験や現地のアメリカ人ではできないような高度の技術を要する職務経験が必要となります。またEビザの申請は50%以上が日本資本の企業、さらに日本国籍者に限られますので、これら条件を満たさない場合は、国籍を問わないLビザの条件を果たすかを検討することになります。ただし、配偶者の国籍は問いません。

• J1とH3研修ビザ

大学を卒業後、米国にて短期の研修を行なう場合は、J-1研修ビザが考えられます。アメリカ以外の国の大学や短大を卒業して、さらに米国以外で1年以上の関連職務経験があれば、企業研修プログラムを通して、最長18ヵ月(旅行業界の場合は12ヶ月まで)まで研修を行うことができます。米国以外の国で学位を取得していない場合は、米国外で5年間の関連する職務経験があることが条件です。しかしながら、人材派遣業界はJ-1の研修をすることができなくなりました。さらに、最近では危険物に接するような製造業の工場内での研修も審査が大変厳しくなっているようです。また、J-1企業研修は、研修や技術の向上が主目的であるため、正規従業員のように働くことはできません。また、J-1の研修内容や出身国によっては、研修終了後2年間の本国滞在要求が課せられることがあるので、事前にJ-1スポンサーや専門家に問い合わせた方がよいでしょう。

研修内容に関連する職歴や学歴が無い場合は、H-3研修も考えられます。しかしながら、H-3研修は教室内での講義を主体としているため、現場でのオン・ザ・ジョブ・トレーニングは最小限におさえなければなりません。
最長期間は2年間ですが、2年間を使いきってしまうと国外に6ヶ月間滞在しなければ再度H-1BやLビザで米国に入国することができなくなります。J-1もH-3もいずれも企業内研修を通じて自国では得られないような技術を米国で学ぶことにより、研修終了後は自国に帰り、その知識や経験を生かすことを目的としています。

                 

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執筆:大蔵昌枝弁護士, ベーカー・ドネルソン法律事務所
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