一昨年度、トランプ大統領がBuy American Hire Americanという大統領令を発表しました。移民局、労働局、国務省など各政府機関は、アメリカ人を優先するために外国人のビザ審査を厳しくするように指示を受け、米国大使館でのビザ面接審査、入国時の審査、さらに移民局によるビザ請願書の審査など、あらゆる面で審査が厳しくなっています。

特に、最近では日本からの短期出張者がよく使うビザ免除プログラム(ESTA)での入国に問題がでてきているようです。ESTAとはオンラインで申請できる電子渡航認証のことで、オンラインで個人情報の登録を行えば、短期商用・観光目的で米国に90日以内の滞在をすることができるプログラムです。短期商用・観光目的には次のものがあげられます:(1) 商用-取引先との会合、科学、教育、専門、ビジネス分野の会議への参加、財産の処理、契約交渉;(2) 観光/旅行-旅行、休暇、娯楽、友人や親族の訪問、休養、治療、同窓会や社交、奉仕活動など、及び報酬を伴わない音楽やスポーツなどイベント或いはコンテストのアマチュア参加;(3)米国を通過して他国に渡航する場合。ESTAは2年間有効ですが、米国への入国拒否・ビザ却下・強制送還をされた人、また滞在資格を超えて不法に滞在(オーバーステイ)するなど違反事項があれば、ESTAを申請することはできません。ESTAを申請できなくても、その代わりにB1/B2短期商用・観光ビザを申請することはできます。B1/B2短期商用・観光ビザは、日本国籍保持者であれば通常10年間有効なビザスタンプを発行してもらえます。入国時は入国目的に応じて一回に90日から180日以内の滞在資格をもらうことができます。90日以内に国外にでなければならないESTAとは異なり、B1/B2ビザ保持者は、正当な理由があれば米国内で滞在資格を延長したり、変更したりすることができます。

日本からの短期出張者は、今までは比較的容易にESTAで入国することができましたが、最近では入国時に第2次審査室に連れて行かれることも多くみられるようになりました。これまでと比較すると入国目的をより詳細に聞かれるようになりました。入国官によっては、アメリカの訪問先に電話をかけて旅行者の入国目的を確認することもあり、本人の陳述とアメリカ訪問先担当者の回答内容に相違があったり、また本人の回答が矛盾している場合など、入国を拒否される傾向が増えています。過去には、就労目的での入国であると判断された場合、最悪入国を拒否され、就労ビザを取得して再入国するようにいわれて送還されるだけでした。ESTAでの入国を拒否されたら、将来ESTAの申請はできなくなりますが、他のビザを申請することはできます。ただ、最近では入国時の回答に問題があれば、入国意図を偽ったと判断され、システムに不法入国を試みたと記録され、原則ビザ申請禁止処分となる事例が見られるようになりました。その場合は、入国禁止処分の免除を申し立てる必要が出てきます。ビザ審査官が請願内容を検討して免除してくれる意向を示せば、アメリカ本土にビザを発行してよいか伺いを立て、本土の許可が出たらビザが発行されます。この手続きの為に、ビザ申請時は毎回2~3か月という長い時間がかかるようになります。従って、日本からの短期出張者は、ESTA、B1短期商用ビザ、或はEビザ、Lビザ、H1Bビザなどの就労ビザの中から、入国目的に応じたプログラムやビザ種類を選択して入国することが賢明といえるでしょう。

執筆:大蔵昌枝弁護士

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本雇用・労働・移民法ニュース記事は弁護士として法律上または専門的なアドバイスの提供を意図したものではなく、一般的情報の提供を目的とするものです。また、記載されている情報に関しては、できるだけ正確なものにする努力をしておりますが、正確さについての保証はできません。しかも、法律や政府の方針は頻繁に変更するものであるため、実際の法律問題の処理に当っては、必ず専門の弁護士もしくは専門家の意見を求めて下さい。テイラー・イングリッシュ・ドゥマ法律事務所および筆者はこの記事に含まれる情報を現実の問題に適用することによって生じる結果や損失に関して何ら責任も負うことは出来ませんのであらかじめご承知おき下さい。

Posted on Mar 21st 2019

2019年4月1日にH-1B専門職ビザ申請の受付が始まります。H-1Bとは専門的知識を有する大卒以上の学位取得者を対象とした短期就労ビザの一種で、毎年H-1Bの就労開始日(10月1日)の6ヶ月前の4月1日に申請受付が始まります。

H-1B年間枠.H-1Bには、年間6万5千の一般枠とアメリカの大学院以上の学位取得者を対象とした2万枠が設けられています。一般枠の中から6,800枠はチリとシンガポール国籍者に割り当てられます。ここ数年間H-1Bの申請者は年間枠を大幅に上回っているため、申請受付は4月の初週で締め切られ、無作為の抽選で選ばれた申請者のみ審査されています。ここ数年間の当選確率は30%~50%で推移しています。今年も昨年同様、申請受付が4月初週の5日間のみであると予想されますので、早めに申請準備を始めたほうがよいでしょう。なお、今年から抽選の順番が変わり、最初に全員一般枠の抽選にかけられ、その後にアメリカの大学院以上の学位保持者で落選したものは、再度大学院枠で抽選されます。抽選の順番を変えることで、高学歴保持者の当選確率が高くなります。

H-1B年間枠免除.H-1Bの延長申請、過去6年間にすでにH-1Bを取得したもの、また、非営利団体の大学機関、大学機関と連携プログラムがある非営利機関(たとえば、大学からインターン生をうけいれている病院など)、もしくは政府や民間の非営利のリサーチ団体などの雇用主は年間枠の対象とはなりませんので、4月1日の申請時期を待たずに、年中いつでもH-1Bを申請することができます。

H-1Bの申請条件. H-1Bビザは基本的には4大卒者(もしくは同等の資格をもつもの)を対象としていますが、大学の専攻科目がポジション内容と一致していることが条件です。ただ、トランプ大統領がBuy American Hire Americanという大統領令を発表してから米国移民局の審査が一層厳しくなり、追加証拠の要請がくる確率が非常に高くなっています。文系職のみならず、理系ではコンピューター関連職種、さらに平均賃金レベルが低いポジションなどは審査がかなり難航することが予想されます。

H-1B遵守事項.H-1B 雇用主はその地域の平均賃金もしくは同職社員に支払う賃金のいずれかの高い方をH-1B 社員に支払う義務があります。H-1Bはフルタイムでもパートタイムでも申請できますが、フルタイムの場合は最低でも年間平均賃金、パートタイムの場合は平均時給を支払う義務があります。また、H-1B 雇用主はH-1B申請前にH-1B の雇用条件(職務、賃金、勤務場所、勤務期間などの情報)を社内2箇所に10営業日間掲示する必要があります。その他にもH-1B 雇用主はH-1B期限満了前に会社の都合でH-1B 社員を解雇した場合、その社員が自国へもどるための渡航費用をオファーする義務があります。さらに勤務地が複数にわたる場合、それぞれの地域の平均賃金を遵守する必要がありますので、注意が必要です。なお、雇用主はH-1B社員の給与や雇用条件に関し、政府役人や社員などから閲覧を求められたらすぐに開示できるように、これら情報をPublic Access File に保管する義務があります。

複数企業・転職 H-1Bはスポンサー企業での就労に限定されていることから、転職を希望する場合、新しい雇用先が新たにH-1Bの申請手続きを行わなくてはなりません。また、H-1Bはパートタイム申請も可能なため、雇用主が複数いる場合は、それぞれの雇用主がH-1Bを申請することで、複数企業で同時に就労することもできます。また、H-1B枠免除団体を通してH-1Bを取得していれば、H-1B枠免除団体での雇用が続く限りは、H-1B枠対象企業が2つ目のH-1Bを同時雇用として申請することもできます。ただし、この場合H-1B枠免除団体での雇用が終了した時点で、2つ目のH-1Bも無効となってしまいます。なお、H-1B枠免除団体からH-1B枠対象企業へ転職するときは、新たにH-1Bの年間枠の対象となりますので、注意が必要です。

申請料金.H-1Bの初回申請費用は、基本申請料金$460、詐欺防止費用$500(初回申請のみ), ACWIA追加申請料金 $1500(社員25名以下の場合は$750)の3通りの費用がかかります。H-1B枠免除の対象となる非営利団体はACWIA追加申請料金が免除されます。また、2015年12月の米国議会一括予算法案により、50名以上の社員をかかえる企業で、50%以上の社員がH-1BやLビザ保持者であれば、従来の申請費用に加え、さらに$4,000の追加申請費用が課せられるようになりました。

オンライン登録システム来年度からは、雇用主はH-1B申請前の特定期間にオンラインシステムに雇用主と社員情報を登録することになります。このシステムの導入により、H1Bの抽選はシステムを通して行われ、当選者のみ特定期間にH1Bの申請を提出するようになります。

執筆:大蔵昌枝弁護士

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Posted on Feb 19th 2019

国外関連会社1年勤務条件の解釈に変更

駐在員がよく使うビザにはE条約ビザとL関連会社間異動ビザがあります。Lビザは、日本やアメリカ国外にも関連会社を持つ多国籍企業がアメリカに駐在員を派遣する場合に利用できるビザです。またEビザとは異なり、Lビザは条約国の社員でなくとも、アメリカ国外の関連会社にいる社員であれば、国籍に関係なく、アメリカの関連企業に派遣することができます。Lビザを利用するには、アメリカの派遣先会社と日本などアメリカ国外にある会社が、本店・支店、親会社・子会社の関係にあり、親会社・子会社の場合には50 パーセント以上の株式(或は所有権)を保有している必要があります。50 パーセント未満の株式保有の場合は、実質的に会社経営をコントロールしていることが条件となります。また、同じ株主によって所有・管理されている兄弟会社の関係でも関連会社とみなされます。 

派遣社員は、アメリカ入国申請直前の3 年間の内最低1 年間アメリカ国外の関連会社で役員・管理職、または特殊技能職のポジションで働き、アメリカに役員・管理職、または特殊技能職として赴任する人が対象となります。例えば、日本本社や他国の関連会社でエンジニアとして1年間以上継続して勤務している人は、居住国にてLビザを申請して、渡米することができます。ところが、移民局は2018年11月15日に、どの時点での3年間を対象期間とするかに関し、新しい解釈を発表しました。以前の解釈では、“アメリカ入国申請直前の3 年間”とは、実際にアメリカに入国した日の直前の3年間を指していました。新しい解釈では、“アメリカ入国申請直前の3 年間”とは、Lビザ申請日直前の3年間を指すことになります。例えば、日本のA社で2年間勤務した社員が、後にF1学生ビザでアメリカに留学し、卒業後OPTでアメリカの関連会社で働いた場合、以前の法律であれば、アメリカに学生ビザで入国した直前の3年間の内最低1年間米国外の関連会社で勤務しているので、この社員はF1/OPTからLビザに滞在資格の訂正申請をすることができました。ところが、新しい解釈では、Lビザに滞在資格変更申請を提出した時点から過去3年の間、最低1年の国外関連会社で勤務していなければ、Lビザへの変更申請はできなくなりました。従って、学生ビザで入国して2年以上アメリカ国内でF1学生として就学し、OPTを使って就職していれば、この条件を満たさなくなります。この場合、申請者は一度出国し、アメリカ国外の関連会社で1年勤務すれば、Lビザを申請することができます。

ただし、この新しい解釈には例外があります。つまり、アメリカに入国後、他のビザ種類でずっと関連会社で働いていた場合は、“Lビザ申請日直前の3年間”ではなく、“アメリカへの入国日直前の3年間”を対象期間とみなすことができます。例えば、H1BやEビザなどの就労ビザでアメリカに入国し、その後ずっとアメリカの関連会社で勤務していれば、アメリカへの入国日直前の3年間の内最低一年間国外の関連会社に勤務していれば、国外1年勤務条件を満たしたとみなされ、EやH1BビザからLビザに訂正申請を行うことができるということです。ただし、H1Bで働いた期間はLビザで働いた期間と一緒に換算されますので、Lビザ最長期限からH1Bで働いた期間を差し引いた期間分のみLビザを申請することができます。しかしながら、最初に学生ビザで入国した場合は、この例外措置は当てはまりません。学生ビザ保持者は、アメリカ国内の関連会社で働く目的で入国したわけではないので、3年間の対象期間を “アメリカに入国直前の3年間”の期間とみなすことができません。この場合、Lビザ申請日時点において、過去3年の内の最低一年間国外の関連会社に勤めていなければ、F1/OPTからLビザに滞在資格の訂正申請をすることができません。

尚、アメリカ国外の関連会社での勤務経験中にアメリカに短期出張しても、一年間の継続勤務の条件を中断するものではありません。しかし、国外に出ていた期間は一年間の継続期間には換算されません。例えば2018年1月1日から今まで継続してA社に勤務し、2018年度には合計で60日間国外に出た場合、2019年に60日を加算した日(3月1日)が1年間国外に滞在していた期間となります。

執筆:大蔵昌枝弁護士

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Posted on Jan 22nd 2019

H-1B 年間枠対象の新規申請者に対し、事前の雇用主登録制度が提案されています。これは昨年4月のBuy American and Hire Americanという大統領令13788に基づいたもので、H-1Bがより高学歴、或は高収入取得者を優先するように配慮された制度です。

今までの申請方法では、H1B申請者数が年間枠を大幅に上回っていたため、毎年4月の初週で申請受付を締め切っていました。移民局は20万件ものH-1B申請者情報を手作業でシステムに入力してから申請者を抽選にかけ、5月から9月にかけて当選者には当選通知を郵送し、落選者には書類を返還していました。

新システムでは4月の申請受付前の一定期間に雇用主がオンラインで雇用主と申請社員情報を記入し、そのデータをもとに移民局が申請者を抽選にかけ、当選した申請者のみH-1Bの申請書類を提出するように通知がきます。このシステムの導入により、移民局がH-1B申請者情報をシステムに入力する手間が省け、さらに当選者のみ申請書類を提出するので、落選者の書類を返送する必要がなくなるため、H-1Bの抽選と通知過程がより迅速に処理され、処理時間とコストが大幅に削減される見込みです。雇用主側も当選者のみの申請書類を作成することになるので、コスト削減に繋がります。

雇用主は社員一人につき登録は一回に限られます。つまり、同一社員に対して異なる職種で2回登録することはできません。ただし、別の雇用主が同じ社員を登録することはできます。また、申請は登録された社員の申請に限られますので、別の社員を代わりに申請することはできません。

また、今まではまずアメリカの大学から取得したマスター学位以上の学位保持者が上級学位用の2万枠の抽選にかけられ、落選者は更に一般用の6万5千枠で再度抽選に挑みました。新システムでは抽選順位が変わり、まず申請者全員が一般用の6万5千枠の抽選にかけられ、マスター以上の学位保持者で落選した人はさらに2万枠の抽選にかけられるようになります。提案された法案には高学歴や高収入取得者を優先するような明確な記載はありませんが、抽選の順番を変えることにより、実際にはマスター以上の学位保持者の当選確率が16%ほど高くなる見込みです。

当選者は移民局が指定する一定期間内に申請書類を提出しますが、従来の5日間の申請期間から60日間ほどに申請期間の幅が広がると思われるので、雇用主は余裕をもって申請できるようになる見込みです。また、今までは当年度の申請書類が4月初週に集中して申請されたために、移民局の審査に遅れがでており、そのために本年度も9月30日まで新規申請者のプレミアム特急申請(15日審査)がストップされ、9月末になってもまだ遅れに対応できずにプレミアム受付停止はさらに2月19日まで引き延ばされました。新システムでは従来の申請受付期間よりも申請受付期間に幅ができるので、移民局の書類受け入れ作業もよりスムーズになり、プレミアム中止の期間も今年ほど長引くことはないのではないかと思われます。尚、H-1Bの年間枠免除機関はこの制度には影響されません。つまり、大学機関や大学機関と連携している機関、政府や非営利研究施設、H-1Bの延長申請や雇用主変更申請、さらに過去6年間にH-1Bを保持したことがある人でH-1Bの残存期間がある場合は、年中いつでも申請は受け付けられます。

しかしながら、12月3日まで一般からのコメント期間が設けられ、現時点ではコメントが検討されている最中で、2019年度4月のH-1B申請時期までにこのシステムのテストが終わるか現時点では未定です。このため、何万社もの雇用主が一斉にオンライン登録をしてシステムにテクニカルな問題が出ないように、このシステムの導入を2020年度まで遅らせるように提案もあがっています。

執筆:大蔵昌枝弁護士

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Posted on Dec 21st 2018

2017年4月にトランプ大統領が“Buy American Hire American”という大統領令を発表してから、労働局、移民局、国務省など各政府機関は、アメリカ人の採用を優先するための措置を取るように指示を受け、これにより各種ビザ審査が一層厳しくなりました。最近では、事前の通告なく移民局内部の方針が変更されていることが多くみられるようになり、ビザ保持者の滞在資格維持に影響を及ぼすようになっています。下記にOPTとCPTに関する最近の移民局の新しい方針について説明します。

F-1ビザの学生は卒業前か卒業後にOptional Practical Training (“OPT”)を申請して、12か月まで学校外の企業や団体で仕事をすることができます。OPTとはアメリカで学位取得を目的とする大学にフルタイムで9ヶ月以上在籍した学生が、学校外の企業で申請できる就労許可証のことです。OPTは各学位レベルに対して12ヵ月申請することができます。STEM学位に該当する理系の学生であれば、OPTをさらに24か月延長することができますが、延長申請時には雇用主が24か月間の研修計画書を提出しなければなりません。

今年1月には事前の通告なしに、移民局のウエブサイトにいつのまにかSTEM-OPT保持者の派遣会社の顧客先での就労を制限する内容が追加されていました。このため、H1Bの審査中に、申請者がSTEM-OPTを使って雇用主以外の場所で就労していたという理由で、滞在資格違反を問われました。これに対しIT派遣会社連盟が移民局に対し訴えを起こしましたが、判決が出される直前に移民局が妥協した形となりました。つまり、STEM-OPTの就労は研修目的を達成し、研修提供社が雇用主としての条件を満たせば、雇用主の職場以外の場所での就労(例えば、オンラインや遠距離雇用)は許されるとされました。また、派遣会社やコンサルティング会社が雇用主となる場合は、派遣会社やコンサルティング会社自体が研修を提供するもので、雇用主の条件を満たしていれば、STEM-OPTを利用して学生を採用してよいとされました。

最近では、OPTとCPTを合計で12か月以上使って就労した学生は移民法違反とみなされ、H1Bが却下される傾向がみられるようになりました。Curricular Practical Training (“CPT”)は、その就労が学校の単位になる場合、若しくは就労が学位取得に重要な役割を果たすことが条件となっています。CPTも12ヵ月まで申請することができますが、CPTを12か月全部使用した場合はOPTは申請できない規定となっています。今までは、学生はCPTを12か月間すべてを使わなければ、そのあとはさらにOPTを申請して仕事を続けることができました。ところが、最近、同じ学位レベルでOPTとCPTの両方を使って12か月以上就労した学生は移民法違反だという理由で、H1Bが却下される例がみられるようになりました。この移民局の新しい方針が果たして合法であるかは、今後議論されると思われますが、このような状態にある現時点においてはOPTとCPTの合計使用期間に注意する必要があると思われます。

更に、滞在期限がD/S(=Duration of Stay)で特定年月日が明記されないF-1、J-1、M-1ビザ保持者は、以前は、裁判官から強制送還の通知が発行されない限りは不法滞在扱いになりませんでしたが、今年の5月からはこれらのビザ保持者もI-20やDS2019に書かれてある滞在期間を超えて滞在した場合、或は、事前の許可なしに期間中に学校や研修プログラムを中断した場合は滞在資格違反となり、3/10年入国禁止の対象になります。つまり、一回の入国で許可された滞在期間を180日超えて滞在すると3年間はアメリカへの入国が禁止となり、また、不法滞在が365日を超えると10年間アメリカへの入国禁止となります。従って、OPT/CPTを12か月以上使ったという理由で後になってH1Bを却下された場合、違反した時点に遡ってオーバーステイが換算されるようになったので、3/10年入国禁止の対象にならないよう注意が必要です。

執筆:大蔵昌枝弁護士

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Posted on Nov 20th 2018